2012年12月13日木曜日

うつ病の休職:第2期 生活リズム確立期

第1期で泥のように寝て、休養がしっかりとれると、だんだんそんなに眠れなくなってきます。昼寝もそんなにしたくなくなりますし、自然と起きている時間が延びてきます。

そうなってきたら、第2期の「生活リズム確立期」に入ります。
この時期は、「睡眠、食事、運動」のリズムをつくります。つまり、寝る時間、起きる時間、食べる時間、体を動かす時間を一定に整えます。
「めし、ふろ、寝る」ならぬ「めし、寝る、動く」ですね。
「健全な心は健全な体に宿る」と言いますが、心の健康回復は、まずは体のはたらきを整えることからなのです。

寝る時間は早めを心がけます。23時には床に入ったほうがよいと思います。
遅くとも8時くらいには起きるのが理想です。もっと早くてもいいですが、遅くなって昼近くなるのはなるべく避けます。

食事の時間も一定にします。
朝は食べない方でも、お茶くらいは飲んだほうがよいと思います。
昼は休職前の生活にあわせて、12時前後がよいでしょう。夕食は遅くならないように、20時くらいまでにはとりましょう。満腹過ぎると睡眠に差し支えるので、寝る3時間前までにとることがよいとされています。

この時期の頃になって、お腹の調子を崩す方が少なからずいらっしゃいます。下痢したり、便秘したり、両方を交互に繰り返したりします。理由はわかりませんが、お薬の影響もあるかもしれません。過敏性腸症候群で知られるように、脳と腸のはたらきは関係します。
お腹の調子が悪い時に無理に食べる必要はありませんが、普段から不規則になってしまうと、体には負担です。一度に大食せず、3食少しずつとるようにすると、お腹の調子も整ってきますよ。

お薬のあるなしに関わらず、アルコールは飲まないことを強くおすすめします。
アルコールは体にとっては毒物であり、入ってきたら肝臓で分解しなければならないですし、回復途中の脳にも負担になります。

あと、大事なのは運動です。
この時期には、生活の中に少しずつ運動を取り入れていきます。午前か午後に30分から1時間くらいの散歩くらいの軽い運動がおすすめです。

ジョギングは私はあまりおすすめしていません。私の限られた経験ではありますが、走った人はなぜか回復に時間がかかる印象があります。うつ病のときはからだの緊張がぬけにくいのですが、激しい運動がからだを交感神経優位にして、より緊張させてしまうのではないかと、自分なりに理屈を考えてみました(ただの推測ですが)。あまりからだを疲れさせすぎても、回復のさまたげになる印象があります。

この時期はリズムの確立が何より重要です。リズムを作ると、体が楽になり、こころの回復に集中できるようになります。

2012年11月14日水曜日

うつ病の休職:第1期 休養リセット期

うつ病で休職したら、まずは休養です。すなわち、睡眠です。

睡眠を生活の中心にします。
夜早めに寝ることが大事ですし、昼も眠気がくるようなら寝てしまってかまいません。ただ、夜眠れなくなってしまうようなら、昼寝は短めにします。
寝る合間に食事をとるくらいでちょうど良いです。食事も軽めにします。

この時期は、疲れていてあまりものを考えられず、とにかく寝ていたいという感じになっています。仕事から解放されて、気も楽になるので、仕事をしていたときよりは寝つきやすくなるはずです。

ただ、仕事をしていたときの緊張感が身体に残ってしまって、疲れているのに眠れないということもあります。その場合は、医師に相談して薬を調整してもらってください。

私自身は、この時期はしっかり眠れるような処方にして、睡眠が安定したら徐々に減量していくようにしています。

文字通り泥のように眠る期間をしっかりとると、だんだんそんなに長く寝られないようになります。日中もそんなに眠くなくなってきて、自然と起きていられるようになります。

だいたいこの時期は2週間から1ヶ月続きます。それより長いことは稀です。
起きられなくなるという心配をせずに、しっかり眠っちゃってください。

2012年11月13日火曜日

うつ病で休職したら会社に早めに確認すること

うつ病で仕事を休むことになったら、最初は有休を消化することが多いです。

有休が終了すると、会社によっては所定の病気休暇などがあるところもあります。3ヶ月くらいまでが多いです。多くの場合、この期間までは基本給が支払われます。
会社によっては、もっと長い期間、給与が支給されることもあります。

その期間のうちに復帰できなかった場合は、休職となります。
この休職の期間、つまり会社に在籍できる期間が、会社により異なります。また、同じ会社でも、勤続年数によって期間は異なります。
この期間は、原則として給与は支給されず、健保からの傷病手当金の支給となりますす。傷病手当金は1日あたり、「標準報酬日額の3分の2」の設定になっています。

このへんは人事や管理、総務、労務などと呼ばれる部署に確認します。できれば、就業規則をとりよせてください。
休職中のお金や身分のことを把握していないと、安心して休養がとれません。休みに入った直後は考える余裕がないと思いますが、少なくとも1ヶ月以内には確認しましょう。



うつ病の回復には、3つの時期がある。

この1年、自分なりにすごくがんばった。たくさん残業もしたし、不本意なことも耐えて、会社の仕事をこなしてきた。そういえばなんだか最近、眠れない。寝つける日も、朝暗いうちに目がさめてしまってもう眠れない。集中力も落ちてきたし、資料を読んでいてもさっぱり頭に入ってこない。食欲も出ないし、無理して食べてもおいしくない。休みの日も寝ているだけで、外出するのもおっくう・・・

周りの人から精神科受診をすすめられて、しぶしぶ受診したら、「3ヶ月の休養が必要です」との診断書。
えー、3ヶ月も・・・?!そんなに長く休んだことないよ。いったいどうやって過ごせばいいの?

・・・という方が多いと思います。普通に生活していたら、学校時代を含めても3ヶ月も休んだことない、という方も多いでしょうし、びっくりして当然ですよね。

そこでまず、お伝えしたいのは、うつ病の回復には、3つの時期があるということです。

第1期:「休養リセット期」
第2期:「生活リズム確立期」
第3期:「回復リハビリ期」

です。ネーミングは私がつけました。


第1期:「休養リセット期」2週間から1ヶ月
こころとからだの疲れをなるべく降ろす時期。睡眠が生活の中心となります。ここできちんと疲労をリセットできると、あとの流れがスムーズです。

第2期:「生活リズム確立期」1ヶ月
第1期できちんとリセットできたら、睡眠と食事の時間を規則的にして、生活のリズムを作ります。合間の時間の過ごし方は、その時の気力体力に応じて調整していきます。散歩などの定期的な運動も取り入れていきます。

第3期:「回復リハビリ期」1ヶ月
精神面、体調面で安定し、「家にいるぶんには元気で問題ない」という感じになってきたら、休職前の生活に戻るための練習をしていきます。
復職したいという意欲が出てきたら、通勤時間の電車に乗ってみたり、半日〜1日を図書館で過ごす、などの行動をしてみます。

期間は、3ヶ月の休養の場合の目安です。人により、必要な期間はちがってきますが、「いまだいたい自分はどこにいるのかな?」と考えてみると、今後何をすればいいかがわかってきます。

うつ病休職中。どう過ごせばいいの?

はじめまして。精神科医14年目のつかぴーです。
精神科医としてまあまあキャリアと経験を積んでまいりましたが、ここ5−6年ほどは会社で、うつ病などのメンタル不調をかかえる社員さんの復職支援にあたっています。

病院では患者さんの主治医として、会社では「会社のお医者さん」として精神科の領域で産業医的な役割で、復職にかかわっています。
が、これがけっこう難しい。

主治医側としては、「だいぶよくなったので、仕事に戻りたい」と言う患者さんに「復職可」という診断書を書いてみると、数ヶ月のうちに調子が悪くなって、またお休みとなってしまうパターンに悩みました。
産業医側としては、「復職可」という診断書が出てきた社員さんを、短縮勤務や、時に異動などさまざまな配慮を重ねて復帰プランを実行したのに、また徐々に来れなくなってしまうパターン。
正直、よくあります。

何回も休んでしまうのは、ご本人にとってもつらいことだし、会社にとっても大きな損失です。
主治医と産業医、両面から「なんでだろう。どうにかならないものか」と悩みに悩んで、試行錯誤してきました。

その結果、とりあえずの結論は、「スムーズな復職は、休職開始から始まっている」ということでした。
休職中の生活のしかたで、こころとからだの回復はずいぶん違ってきます。
回復の度合いに応じて、「いつ」「どのように」「どれくらい」「何をして」「何に気をつけるべきか」、時間の使い方で気をつけるべきポイントがあります。

回復にかかる時間は、人それぞれで異なります。
でも、回復の道のりと、気をつけるべきポイントは、わりと似ています。いま、自分が回復のロードマップのどこにいるんだろう?それがわかるだけでも、結構安心だと思うのです。
意外と精神科の先生は療養のしかたを教えてくれないので、ブログで書いちゃおうと思いました。
うつ病で休職中のみなさまにとって、少しでもご参考になれば幸いです。